2019シーズンに向けた補強について
フロンターレ2連覇達成記念のブログの第3弾はポジション別の補強について考えようと思いましたが、それはすべての試合が終了した後にします。
フロンターレはチームのレベルが高いので、フロンターレで出場機会を得られないことがレベルの低い選手である訳ではありません。ただリーグ戦を1試合残しており、そこで戦う選手達には全力を出してもらいたいので、現時点でどのポジションに補強が必要だなどと軽々に表明したくないという気持ちです。
あくまでも一人の素人サポーターの意見なのでそこまで深く考える必要もないのかもしれませんが補強の話は後回しにします。
チームの成績と選手人件費の高騰
そこで今回はフロンターレの収支について考えてみたいと思います。強いチームを維持するにはお金がかかります。ひと昔前まではフロンターレは抑制した選手人件費でリーグ中堅から上位の成績をおさめていました。目利きの強化部の選手選考と外れの少ない外国人選手に恵まれてきました。
情報の正確性には議論があるところでしょうが、Jリーグ選手の年俸情報を記載しているサイトによれば、2018シーズンのフロンターレの総年俸はヴィッセル神戸に次いでリーグ2番目に大きい金額です。選手の顔ぶれを見れば年俸が高いのも頷けますが、強いチームを維持するにはそれなりの年俸を支払わなければなりません。当然そのためには高い収入を維持し続けなければなりません。
ここまで強くなったチームです。年俸が支払えないからといって主力選手を手放すことがないようにして欲しい。強いチームは良い選手に最高の報酬を支払うべきだと思いますし、そうしなければ良い成績を維持できないと思います。
フロンターレの経営情報
Jリーグでは毎年各チームの経営情報を発表しています。

これまでのフロンターレの経営状態はとても良好と思います。メインスタンドの改修もありましたので毎年右上がりというわけではありませんが、赤字も出さずに堅実な経営をしていると思います。
等々力競技場は2013-2014の2年間はメインスタンドの改修工事がありました。入場者数も少なくなっていたこの期間を入れてしまうと収支の推移が正しく見られないと思い、メインスタンドの改修工事が完了して収容人数が現在の26,827人になった2015シーズン(決算月は2016年1月)と優勝した昨年2017シーズン(決算月は2018年1月)の2年を比較します。
ここで注意点があります。営業収入内訳の物販収入の項目は2016年シーズンより追加されたもので、それ以前には独立した項目ではありませんでした。それ以前は物販収入はその他収入に含まれていたと思われます。
2017シーズンの物販収入(563百万円)とその他収入(990百万円)を足すと1,553百万円となります。2017総営業収入に占める割合は30.31%。2015シーズンからの上昇率は14.61%となります。表中にはその数字を入れてあります。
(単位は百万円)
決算月 | 16/1月期 | 18/1月期 | ||
---|---|---|---|---|
対象シーズン | 2015 | 2017 | 収益・費用内訳 | 15/17増減 |
営業収益 | 4,077 | 5,123 | 100.00% | 20.42% |
広告料収入 | 1,569 | 1,854 | 36.19% | 15.37% |
入場料収入 | 777 | 1,038 | 20.26% | 25.14% |
Jリーグ配分金 | 197 | 495 | 9.66% | 60.20% |
アカデミー関連収入 | 179 | 183 | 3.57% | 2.19% |
物販収入 | 下に含む | 0.00% | ||
その他収入 | 1,355 | 1,553 | 30.31% | 14.61% |
営業費用 | 3,977 | 4,730 | 100.00% | 15.92% |
チーム人件費 | 1,685 | 2,339 | 49.45% | 27.96% |
試合関連経費 | 190 | 229 | 4.84% | 17.03% |
トップチーム運営経費 | 430 | 298 | 6.30% | -44.30% |
アカデミー運営経費 | 50 | 60 | 1.27% | 16.67% |
女子チーム運営経費 | 0 | 0 | 0.00% | |
物販関連費 | 0 | 0 | 0.00% | |
販売費および一般管理費 | 1,622 | 1,804 | 38.14% | 10.09% |
営業利益 | 100 | 393 | 74.55% | |
営業外収益 | 3 | 3 | 0.00% | |
営業外費用 | 1 | 2 | 50.00% | |
経常利益 | 102 | 394 | 74.11% | |
特別利益 | 0 | 0 | ||
特別損失 | 0 | 0 | ||
税引き前当期利益 | 102 | 394 | 74.11% | |
法人税および住民税等 | 41 | 133 | 69.17% | |
当期純利益 | 61 | 261 | 76.63% |
収入について
2015シーズンから2017シーズンにかけて営業収入は20.42%上昇しています。2年間で20%以上の上昇は、チームが好調を維持していることとサッカー以外のアトラクションなどの営業努力があってのことだと思います。
2017シーズンのフロンターレは総営業収入はJ1リーグ全体の4位となっていて、その順位は以下の通りです。(単位は百万円)
- 浦和レッズ(7,971)
- ヴィッセル神戸(5,237)
- 鹿島アントラーズ(5,228)
- 川崎フロンターレ(5,123)
Jリーグでも屈指の大規模チームに着実に成長してきたといえます。
ここで2017シーズンの営業収入の内訳を見てみます。全営業収入に占める割合の大きい方から以下のようになっています。その他収入には物販と賞金などが含まれていると思われます。ここではその他収入を物販収入とその他収入に分けてあります。
- 広告料収入(36.19%)
- 入場料収入(20.26%)
- その他収入(19.32%)
- 物販収入(10.99%)
- Jリーグ配分金(9.66%)
- アカデミー関連収入(3.57%)
「広告料収入」「入場料収入」「賞金・配分金などのその他収入とJリーグ配分金」「物販収入」の4本柱に支えられていると考えてよいです。
広告収入(1,854百万円)
2017シーズンの広告収入は全体営業収入の36.19%を占めています。2015シーズンからの上昇率は15%です。上昇率は総営業収入の上昇率(20.42%)に追いついていません。
J1リーグの他のチームと比較しても絶対額としては決して多い方ではなく、J1リーグで広告収入額では7位になります。絶対額の多い3チームは以下の通りです。(単位は百万円)
- ヴィッセル神戸(3,352、総営業収入の64.01%)
- 浦和レッズ(3,193、総営業収入の40.03%)
- 大宮アルディージャ(2,296、総営業収入の62.31%)
神戸は楽天がメインスポンサーとして多額の広告費を支払っているのでしょう。現在J2の大宮が3位とは意外でしたがNTTグループの力でしょうか。但し、広告収入が総営業収入の6割以上を占めているのは正しい姿なのか判断しかねます。以前にもスポンサーが撤退してチームが消滅したことがありました。特定スポンサーからの広告収入への過剰な依存は危険です。
浦和には三菱グループがついていますが、あれだけの大きなスタジアムで入場者数も多いので三菱グループ以外の広告費もそれなりに金額が大きいのだろうと想像します。
ご存じのようにフロンターレのメインスポンサーは富士通です。富士通本体のみならず、グループ内の企業の広告がゴール裏に並んでいます。それを見ながら、おつきあいでスポンサードしているのだろうなぁ、と感じることもありました。ユニフォームの肩スポンサー枠も長い間埋まらずにいました。
2連覇を達成したこの時期はスポンサーの幅を広げる大きなチャンスです。2018シーズンにはマルコメとRENOSYが新規スポンサーとして支援をはじめてくれましたが、2019シーズンにも多くのスポンサーがフロンターレを支援してくれるよう営業部門には期待します。
入場料収入(1,038百万円)
次は入場料収入です。2015シーズンから2017シーズンにかけて25%増加しています。好調な伸び率ですが、2018シーズンは満員に近い状態でチケット売り切れの試合が続いていますので、このままでは大きな上昇は望めず頭打ちの時期を迎えています。
2017シーズンと2018シーズンの入場者数を確認します。
シーズン | ホーム試合数 | 総入場者数 | 1試合当たりの入場者数 |
---|---|---|---|
2017 | 17 | 375,910人 | 22,112人 |
2018 | 16(11/29時点) | 370,647人 | 23,165人 |
チケットの売り切れが続く2018シーズンですが、最終節は25,000人入るとして、2018シーズンは2017シーズンより5%程度の増加となります。その分ぐらいは2018シーズンの入場料収入が増えることは間違いないでしょう。
しかし、2019シーズンは一転減少の可能性もあると思われます。今週発表されたシーズンチケットの1次発売はほとんどの席種で抽選となり、2次発売にはホームA自由と車いす席以外は発売しないと発表がありました。シーズンチケットだけですべての座席を売ってしまったわけではなく、試合毎の販売の枠も残しているとは思いますが、2018シーズンよりも多くの座席がシーズンチケットとして販売されたと思います。
シーズンチケットは試合毎に販売されるチケットに比べて高い割引率で売られていますので、来シーズンにチケット売り切れの試合が2018シーズンと同じぐらいあっても入場料収入は減る可能性が高いと思われます。
ACLでの試合にも多くのサポーターが観戦に来ると思いますが、ACLでは使えないエリアのあるうえに平日開催です。2018シーズンから大幅に増えることは考られません。
入場料収入の頭打ちは大きな問題となってくると思います。ホームグランドである等々力陸上競技場の改修案は出ていますが、増改築にしても全面改築にしても数年の時間がかかります。
現時点の最大収容人数の26,530人で入場料収入を増やすためには料金の値上げ以外は考えられません。2019シーズンのシーズンチケットはほぼ値上げなく発売されましたが、その後は値上げが避けられないのではないでしょうか。
座席毎の価格を考えると、バックスタンド1階の中央エリアを自由席としているのには疑問符がつきます。屋根がなくて雨が降ると濡れてしまうため高い料金設定ができないのだと思いますが、メインスタンドでも前から10列目ぐらいまでは雨が降れば濡れます。バックスタンド1階中央エリアの値上げも遠くないものと思います。
Jリーグ配分金(495百万円)
2016シーズンにはJ1チームに1.8億円支給されていたJリーグ配分金ですが、2017シーズンにDAZNと契約することにより3.5億円に増えました。チームの努力などによってその額も多少変わるようですが、DAZNとの契約がある限り同程度は維持できると思います。ただ大幅な増加はないでしょう。
その他収入(1,553百万円)
2016シーズンよりその他収入は物販収入とその他収入に分けられました。2017シーズンのそれぞれの額は以下の通りです。(単位は百万円)
- 物販収入(563)
- その他収入(990)
物販収入(563百万円)
フロンターレの決算は毎年1月ですので、2017シーズンの優勝記念グッズの売り上げがどれだけ含まれているのかは不明です。多くのグッズは2018年2月以降に発送されたと記憶していますので、2019年1月期の決算では物販収入は増えていると思います。
優勝記念グッズ以外にもユニフォームや毎週のように売り出されるグッズについても、商魂たくましいといわれるフロンターレの事ですので、引き続き面白いグッズを発売し、物販収入を伸ばしていくのではないかと思います。サポーターの数の着実な増加が物販収入を引き続き押し上げていくものと思います。
ただ、優勝記念グッズは優勝しないと販売できないので、優勝バブルがはじけた後には物販収入も減少する時期も出てくるので、その時が踏ん張りどころです。
その他収入(990百万円)
賞金などが含まれているその他収入です。賞金以外にはなにが含まれているのは不明です。物販収入項目がその他収入項目から分かれて独立した2016シーズンとは比較可能になっているので見てみます。物販収入が含まれないその他収入の額は以下の通りです。(単位は百万円)
- 2016シーズン(672)
- 2017シーズン(990)
J1リーグ戦の優勝賞金は3億円ですので、その分が上乗せされていると考えて良いでしょう。ルヴァン杯の準優勝やACL出場の収入なども含まれると思います。
ちなみに2017シーズンにACLを優勝(賞金300万USドル)した浦和のその他収入は1,080百万円でした。2018シーズンのACL優勝賞金は400万USドルで、これが鹿島に入ります。優勝賞金以外にも、予選リーグ突破するともらえる賞金とかがありますので、ACLでもひと稼ぎをしてもらいたいです。
その他収入は勝てば増えるものです。この収入を高いレベルで維持し続けるためにも強いチームを維持していかなければなりません。
理念強化配分金
2017シーズンの収入には項目がありませんが、2017シーズンからDAZNマネーの柱である理念強化配分金が導入されています。2017シーズンから2019シーズンまでの3年間はJ1優勝チームに合計15.5億円が3年間に分けて支給されることが決まっています。
現時点でフロンターレは2連覇していますので、以下のようなスケジュールで理念強化配分金を受け取ることが確定しています。もちろん2019シーズンも優勝すれば追加で15.5億円です。
2018 | 2019 | 2020 | 2021 | |
---|---|---|---|---|
2017優勝分 | 10億円 | 4億円 | 1.5億円 | |
2018優勝分 | 10億円 | 4億円 | 1.5億円 |
理念強化配分金の使い道は、Jリーグに規定があります。詳しくはそちらを参照してください。
https://www.jleague.jp/docs/aboutj/regulation/2018/13.pdf
この理念強化配分金を受け取るには、フロンターレはその理念に合致した使い道について計画書を提出しなければなりません。その後Jリーグの承認を受けてから支払われると規定されています。
一部報道には、その使途として、クラブバスを新しくし、クラブハウスの食堂を改装した、とありました。そのうちにすべての使途について公開されるときが来るとは思いますが、まだまだ使えるお金が残っていると思います。

フロンターレは2016年に新しくクラブハウスを建てかえました。その費用はそれまでにフロンターレが蓄積してきた利益から支払っているものと思います。これまでなら毎年の利益から環境整備費を捻出してきたはずですが、理念強化配分金をサッカー環境整備の費用に使うことができるので一気に環境整備ができるようになります。その浮いた分は選手人件費に振り当てることもできると思います。
この理念強化配分金は直接的には選手人件費に関係のかないように思われますが、そんなことはありません。あっちの費用を他の方法でまかなうことができれば、こっちの費用に収入から多くつぎ込むことができるのです。理念強化配分金を上手に使い他チームとの戦力差を広げていってもらいたいです。
まとめ
収入増についてフロンターレの収入構造を見ながら考えてきましたが、結論としては秘策はないということです。
広告収入、入場料収入、物販収入、賞金収入をそれぞれ着実に増やさなければなりません。そのためには何よりもチームが強くあることが一番重要に思います。チームを強くするためには費用がかかります。この「収入増→費用増→収入増→費用増」のサイクルをうまく回してチームが大きくなっていくしかなさそうです。
長くなり失礼しました。
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